「剣風伝奇ベルセルク」感想

 Huluでアニメ「剣風伝奇ベルセルク」を観ました。
 1997年10月から、1998年3月まで放送された深夜アニメです。
 原作コミックの「黄金時代篇」が基軸となっていて、蝕までが描かれます。

 ちなみに、劇場版(Huluでは未配信)の3部作も視聴済みです。
 劇場版のアマゾンのレビューは酷評が多いです。
 自分は劇場版は好きです。

 劇場版、確かに原作のエピソードを削ったところも多くて、ガッツと養父ガンビーノの関係なんて、フラッシュバックという形でほんの数秒しか描かれません。

 ベルセルクを読んだことのない人は、劇場版を観ても、感情移入はしづらいかもしれません。
 レビューの中にも、ガンビーノとの逸話をバッサリカットしたのは云々というのがありますが、それはその通りですが、制作者の意図としては「原作を読んでない人向けではない」ということだと思います。
 本当にガンビーノとのエピソードを削ったのなら、フラッシュバックでガンビーノが出てくるわけがありません。

 声優については劇場版はアニメ版と違いますが、私は「コミック」→「劇場版3部作」→「アニメ」という順番で観たので、特に気になりませんでした。
 アニメ版のほうが、声優に関してはしっかりと特徴があります。
 劇場版は抑えられている感じがします。
 なのでアニメを先に観た人は、違和感を覚えるかもしれません。

 原作のコミックは、30巻ぐらいまでは読みました。
 2015年1月時点で37巻まで出ているようです。完結は50巻ぐらいでしょうか。
 シールケが出てきた辺りから雰囲気が変わりました。
 22巻あたり。
 22巻の後半、ファルネーゼとセルピコの逸話が挿入される場面があって、物語の大筋には関係ないですが、あのいびつな主従関係(しかも異母兄妹)の背景が明らかにされます。個人的に大好きなところ。
 ファルネーゼは大貴族の娘で、セルピコは赤貧で、野垂れ死ぬところをファルネーゼに拾われます。
 持つ者と持たざる者で、どちらも歪んでいて、それ故にしっくりとくる関係なのかもしれません。

 話が逸れました。
 先に劇場版を観ていたので、深夜アニメ版ベルセルクには全く期待していませんでした。
 作られたのも15年以上前だし、深夜アニメだし、というマイナスポイントしか目に付かなかったけど、いざ観てみると、コミック版に忠実で、至る所に原作愛が感じられました。
 ガンビーノとの逸話もしっかりと描いてあるし、孤独なガッツが鷹の団の仲間入りするところ、ピピンが無理矢理宴会の場に連れて行こうとして、ガッツが肘でピピンの鼻を殴る場面、ピピンは眉1つ動かさず「照れるな。呑め」といいます。いいです、ここは。
 一匹狼だったガッツは、ようやく鷹の団という自分の居場所を見つける。
 その鷹の団の仲間は、一癖も二癖もある連中ばかり。
 コルカスは現実主義で嫌なやつで事あるごとにガッツに食ってかかるし、ジュドーは器用貧乏なナイフ使い、キャスカは女性ながら男顔負けの剣技で鷹の団の参謀だし、大男のピピンは寡黙ながら頼りになります。
 それをまとめるグリフィスは白皙の貴公子。
 しかもガッツと並ぶほどの強さをも併せ持っています。
 グリフィスとガッツの友情がポイントです。
 この2人を中心に、色々な登場人物が関わって、多くの感情が渦巻いていて、物語にリアリティを持たせています。
 友情、嫉妬、欲望、野望、策謀、葛藤、純愛……
 物語はやがて蝕のときを迎えます。
 コミック史上、アニメ史上といってもいいのか、それとも日本における中世ファンタジー史上といってもいいのか、衝撃的な場面が展開されます。
 ガッツは生き残り(キャスカも)、グリフィスに対して復讐を誓い旅立ちます。

 続編を望む声もありますが、自分も同じです。
 ベルセルクは連作形式のアニメで観たいです。
 劇場版は2~3時間という時間の制約があるからどうしても早足で通り抜ける感じになるようです。

コメント

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