「○○が成功した理由。○○が失敗した理由」がほとんど当てにならない件

コーヒーを入れるカフェの女性
 ネット上の記事、もしくは雑誌の特集記事とかでもそうですが「○○が成功した理由」もしくは「○○が失敗した理由」というタイトルをよく見ます。
 成功と失敗を比較する記事もありがちです。
 そこには以下のような雰囲気がまとわりつくようです。
 成功した会社や人は有能。
 失敗した会社や人は無能。
 これは錯覚の可能性が高いです。
 成功したり失敗したりする時に重要なのは運だと思います。
 運も実力のうちとはいいますが。

 話を戻して、この手の記事(成功とか失敗とかの理由の)は、実際に読むと、もっともらしいことが書いてあって「なるほど」と思いやすいです。

 何が言いたいかというと、この手の記事は意味がありません。
 言い方は悪いけど、子ども向けというか、大学生ぐらいが好んで読むタイプの記事だと思います。
 書いている本人は、恐らくそれを踏まえた上で書いているはず。

 ダンカン・ワッツという社会学者が書いた「偶然の科学」という本があります。
 本の中に、第二次世界大戦の帰還兵に関するアメリカ軍の調査が紹介されていました。
 内容は、地方出身の兵士は、都市出身の兵士より、軍隊生活に馴染みやすい、というもの。
 つまり、田舎育ちのほうが軍隊に適している、ということです。
 言われてみれば、確かにそうかもしれません。
 地方の暮らしは都会に比べたら不便で、軍隊生活と似ている部分が多いと想像できる。
 都会は生活するのに便利だから、そこで育った人は、軍隊生活をさぞ勝手が悪いと感じる場合が多そう。
 田舎の人のほうが軍隊に適している。なんの疑いようもない調査結果に思えます。

 ――しかし実は、アメリカ軍の調査結果は逆でした。
 実際は、都会育ちのほうが、軍隊に馴染みやすかった。
 こちらもいわれてみれば、確かに納得できます。
 都会育ちのほうが、見知らぬ他人とコミュニケーションをとる能力に秀でているし、組織的なシステムにも慣れている。
 都会育ちのほうが軍隊に向いていて当然かもしれない。
微笑むカフェの女性
 これの意味するところは、人間は、目の前にあるデータとその結果に合わせて、理由を後付けして納得する、ということ。
 つまり、何かが成功している場合(もしくは失敗している場合)、後付けならいくらでも理由はつけられます。
 人間は、結果から逆算して、理由を探るのが得意なようです。
 何百万年もそうやって生きてきたから、必然的にそうなってしまったのかもしれません。
 物事がシンプルな場合は、結果から理由を振り返るのは役に立つのだと思います。
 複雑な事象になるとそれが当てはまらないことが多くなるようです。

 ネットでよく「炎上する」という表現を使いますが、あのプロセスも案外と複雑です。
 炎上が起こった後に振り返れば「炎上して当たり前」と思いがちだけど、結局のところ、ネット上には炎上する火種はゴロゴロあるのに、本当に炎上するのは一部です。
 炎上しない事柄は知ることができません。
 つまり存在しないのと同じです。

 作為的に炎上させる人もいます。影響力の高いネットメディアが仕掛けることもあります。しかし基本的にはサイコロを振っているようなものです。

 理由の後付けに話を戻します。
 たとえば、スターバックスがなぜヒットしたのか、それを調べると、幾つも理由が挙げられます。
 アップルやAmazonもそう、Googleも同じです。
 理由の後付けはかんたん。
 重要なのは未来であって、今後、○○は何年以内にこうなる! という予測の記事で、しかもそれが当たるなら価値が高いと思います。
 まずそういう記事は見かけません。

 株式関連のニュースも同様です。
 株価が動いた後に後付けで理由が沢山出てきます。
 株価が動く前にニュースにすればいいのにといつも思います。

 まとめ。
 人間は、目の前にあるデータとその結果に合わせて、理由を後付けして納得しやすいので、何かが成功している理由を探したり、失敗している理由を探したりするのは簡単で、しかも他人を納得させやすい。

 こういった記事を真に受けて、だったら成功した○○と同じようにすれば自分も成功できると錯覚を抱くと大失敗する可能性もあるので注意したほうがいいです。

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