飲食店の厨房では、なぜ新入りが皿洗い担当なのか

 飲食店の厨房で働き始めると、初日や最初の数日、場合によっては数週間、お店によっては数年間は洗い場担当になることが多いです。
 なぜ新人が皿洗いをやらされるのか。
 それは、皿洗いは誰でもできるから、というのがまず第一の理由です。
 皿洗いにもレベルがあって、下手な皿洗いだといっこうに汚れ物が減らない事態になったりもしますが、しかし、皿洗いに関しては、基本的には、誰かがつきっきりで教える必要はありません。
 料理を作るには練習が必要だし、最初は誰かが見守らないとできません。

 新人が皿洗いをする理由はもう一つあります。
 皿洗いは単純作業です。
 特に頭を使う必要はありません。
 従って、周りを見渡す余裕があります。
 もちろん忙しいときは皿洗いに集中するから、周りを見る余裕はないとは思いますが。
 ちょっと暇な時などは、手を休めて、周りを観察することが可能です。
 あの場所では、焼き物やってて、あそこでは揚げ物、あちらはサラダ……というように厨房の配置や導線などを覚えます。
 またはホールの食器の下げ方や頻度も分かります。
 お客さんがどんな感じで入店し、食べて、帰って行くのかも、ある程度分かります。
 皿洗いをやれば、お店全体の雰囲気がつかめます。

 皿洗いはだから、見て覚えるとは安っぽい言い方ですが、そのような側面もあります。
 皿洗いだから皿洗いだけやっていればいいんだ、という考え方は、少し甘いです。

 お店によっては、ホールの新人も、最初は洗い場に入ることもあります。
 洗い場を経験することによって、お皿の下げ方を学びます。
 洗い場を経験しないホールスタッフは、お皿の下げ方が雑なことががあります。

 あとは、いろいろな部署を経験することによって、その人の汎用性が高まることにもつながります。
 皿洗いを経験しないと、皿洗いの人のことが分かりません。
 皿洗いを経験すれば、皿洗いの人のことが分かります。そして配慮ができるようになります。
 何でもそうですが経験が大事だということです。

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