自衛隊に残業はない?

 少し前に、自衛隊の広報関係だと思いますが、自衛官募集に関連したPR動画が話題になりました。
「自衛隊の ソレ、誤解ですから!」というタイトルです。

 結論から述べると「間違いではないけど……ミスリードとは言い過ぎだけど……少しいいように解釈しすぎ」と思いました。
※筆者は4年間ほど陸上自衛隊に在籍していました。従って陸自についてはある程度わかりますが空自や海自のことはわかりません。

 さて、それでは「自衛隊の ソレ、誤解ですから!」について解説していきます。
Q1 みんな体育会系ですか? A帰宅部です。合奏部です、美術部ですとか。
Q2 毎日キツそう。Aだいたい残業ありません。
Q3 仕事は肉体系ばっかり? Aラッパ吹いています。いろいろな仕事があります。
Q4 自由がなさそう。A夜はゲームしています。漫画を読んでいます。
Q5 基地から出られないってホント? A外出可能です。
Q6 男ばっかり? A女性自衛官急増中です。

Q1 みんな体育会系ですか? A帰宅部です。合奏部です、美術部です――
 自衛官は体育会系が多いですが、学生時代は帰宅部や美術部の人もいると思います。
 ちなみに自分は帰宅部でした。
 しかし体育会系が多いのも事実です。
 体力がある、力が強い、声が大きい、何か特技がある人間は、周りから一目置かれます。
 そういう意味では、体育会系ではない人は肩身の狭い思いをすることもあったりします。

Q2 毎日キツそう。Aだいたい残業ありません――
 残業については、難しいところです。
 ……民間の会社の就業時間がたとえば9時から18時まであったとして、勤務時間は8時間となります。本当にこの通りになる会社は少ないのではと思います。残業で1~2時間ぐらい帰宅が遅れるのはよくあることのように思えます。業種にもよるかもしれませんが。
 自衛隊は、通常は8時半から17時までが勤務時間です(駐屯地や基地によって若干変わったりしますが)。
 自衛隊は基本的にはこの時間が守られます。1~2時間の残業が発生することはまずありません。
 しかし、1年中いつでもその就業時間(課業時間)が守られているかというとそうではないです。

 曹士隊員に限れば「だいたい残業ありません」というのはほぼ正しいです。
 営内生活者は清掃や点呼など、一部、課業外でも拘束される時間が発生する場合もありますが基本的にはそれらを除けば消灯までは自由時間です。

「だいたい」というのがくせ者で、時々は残業や突発的な業務が発生したりもします。
 たとえば休みの日であっても、営内(寮の部屋)に残留人員として残っていれば電話1本で呼び出されることもあります(事務室や中隊長室の清掃など)。 
※当直勤務につくと、24時間勤務となります。夜中も不寝番で、見回りをしないといけないので、睡眠時間も少なくなります。しかし、当直明けは代休で休めます。

 演習のときは、時間の概念は希薄になります。
 課業時間外になっても、演習の状況が優先されます。

 幹部自衛官は部隊によっては残業ばかりということもあり得ます。
 そして残業代はありません。

「毎日キツそう」は、キツい日はキツいです。
 しかしキツくない日は楽です。
 部隊や職種によりますが、振れ幅が大きいです。
 何もない日は「機材整備」なんてことで、適当に時間をつぶしたりします。

Q3 仕事は肉体系ばっかり? いろいろな仕事があります――
「いろんな仕事があります」これはその通りで、小銃を持って演習場を駆け回るような職種は一部です(普通科)。
 会計隊や音楽隊などもありますから、肉体を酷使する職種しかないわけではないです。

Q4 自由がなさそう。A夜はゲームしています。漫画を読んでいます。
 ゲームや漫画の持ち込みはできます。しかし、自由度は、民間にくらべると低いです。
 たとえば、駐屯地内では規律がしっかりしていて、歩きスマホなんてしている自衛官は1人もいません。くわえタバコで歩く自衛官もいません。

Q5 基地から出られないってホント? A外出可能です。
 土日や祝日の外出については可能です。
 しかし下っ端の頃は諦めた方がいいです。
 月に土日が4回あるとして、半分は残留人員として残らないといけなかったりします。部隊や職種によっても変わるかもしれません。

 ちなみに、外出の申請は、営内班長や、先任や小隊長、中隊長の判子がいります。
 課業が終わったので外出しますわーよろしくっ、という感じで外に出ることはできないです。
 外出簿に記入して、上官の判子をもらって、当直士長に渡して…というように手続きは煩雑です。
 外出証がないと基本的には外に出られません。幹部自衛官は営外居住のため、外出証なしで外出可能です。
※自分の経験した範囲ですが、はんこがもらえない、ということはありませんでした。手続きは面倒だけど、申請すればほぼ通ります。

 休暇については、これも部隊によって変わってきます。
 集合訓練に参加している時にお正月を挟んでいたりすると、休暇日数は多くなると思います。
 部隊によってはカレンダー通りしか休めないこともあります。

 民間だと、年間休日が100日割ったりもしますが自衛隊はそれに比べると恵まれているとは思います。
 自衛隊は年間休日は120日前後あり、有給休暇が月に2日つきますから、年間で24日。
 従って、年間に144日前後は休める計算です。
 部隊によっては、有休がとれないところもあり、カレンダー通り120日ぐらいの休みになったりします。

Q6 男ばっかり? A女性自衛官急増中です。
 女性自衛官は以前よりは増えましたが、もちろんのこと、男女の比率が同じではないです。
 圧倒的に男が多いです。

 上記の動画をみて自衛官になろうという人は、そもそも自衛官に向いてないようにも思えます。
 自衛官のなり手が少ないそうですが、給与を上げれば解決しそうですが、なかなか難しいようです。

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