読書感想「新世界より」貴志祐介著

 貴志祐介さんの「新世界より」を読みました。
 物語の舞台はおよそ1000年後の日本です。
 未来の日本人は9つ集落に分散して住んでいます。
 ある事情により科学文明は後退しているため、集落同士は密な連絡は取れない状態です。
 日本列島の総人口は5~6万人で、現在からすると激減しています。
 科学技術の水準は低いですが、大人たちはもれなく念動力が使えるため、原始的な生活を送っているわけでありません。

 人間の住む集落の周りには、バケネズミという半獣たちが住み、人間を神とあがめて、人間に使役されています。
 バケネズミは氏族ごとに分かれてコロニーを形成し、互いに友好関係にあったり、敵対しています。
 時々はバケネズミのコロニー間で戦争も起こります。

 全6章構成で、物語は早季という女性の書いた手記という形で進行していきます。
 主人公たちが12歳・14歳・26歳の時期の3部に分けられています。
 
 荒唐無稽な設定とあり得ない展開が続きます。
 上巻の中盤までは、世界観の説明などに費やされて、いまいち入り込めませんでしたが、中盤、夏期キャンプのために集落から離れた少年少女たちが古代文明の遺物である『国立国会図書館つくば館の自律進化型・自走式アーカイブ』なるものと接触した時点から、俄然物語は面白味を増します。

 結末については、後味が悪いです。
 人間とバケネズミの真相は、知ってみるとグロテスクだと感じました。

 再読すると粗が目立ちましたが、最初に読んだときは夢中で読みました。
 バケネズミの将軍がいいです。
 姑息な野狐丸(スクィーラ)と凛々しい奇狼丸将軍の対比は良かったです。

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