漫画版「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」感想


 漫画版「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」を読みました。
 漫画をアニメ化した作品が多いけど「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」は逆で、アニメのほうが先です。

 アニメ版「あの花」はすでに視聴済みです。
 アニメ版は、人から強く勧められて(異常なぐらいに熱心に)、気乗りしないまま見始めました。
 自分に「あの花」を勧めた人は、普段はアニメは見ないそうです。けど「あの花」だけは特別で、号泣したそうです。

 人から勧められて作品に触れることはよくあることです。
 たいていは時間の無駄に終わります。
 他人が良いと思う作品で、自分も良いと思える作品は希有だと思います。

 アニメの「あの花」は希有な作品です。よくできたストーリーだと思います。ええ、号泣でした。最高です。
 まあ結末は……若干不完全だったように記憶していますが……

 それで今回は「あの花」のコミックを読みました。
 全3巻。お手軽です。
 ほぼアニメを踏襲した作りになっています。
 アニメのほう、視聴して何年も経っているから、細部はあまり覚えていないですが。

 漫画版、おおむね良かったけど、自分が大好きな場面が端折ってあったのは残念でした。
 秘密基地で、ゆきあつがじんたんに突っかかる場面。
 一触即発になりますが、幽霊であるめんまがノートに字を書くところです。
 皆それまで、幽霊のめんまの存在を信じてなかったけど、あの件がきっかけでめんまを認知しました。重要なプロットポイントだと思います。
 ED曲「secret base 〜君がくれたもの〜」につながっていきますがあのところは最高です。

 不審に思ったのは上記の点ぐらいで、全体的にはアニメよりもきれいにまとまっているかなと思いました。
 アニメ版が好きな人なら、漫画版も十分に楽しめると思います。

 本作は、お涙ちょうだいの幽霊もの、というイメージで語られることが多いですが、余計なものを端折って骨幹の部分にしてしまえば、確かに「感動系の幽霊ジャンル作品」になります。
 しかし――「あの花」は、一言では語られない闇の部分があって、それが作品の要諦になっていると思います。
 変態「ゆきあつ」と、めんまの母のダークサイドといいますか、闇深い部分がいくつかありますが、それらが存在しなければ「ありがちな、よくあるストーリー」になったかもしれません。
「ゆきあつ」と、めんまの母の存在が、この作品を傑作にしていると自分は思います。

 郷愁も感じます。
 人と人との付き合いというのはそのときは絶対なようでいて(特に子供の頃はそう)、実は儚いものです。
「あの花」は、それを思い出させてくれる物語でもあります。

 補足。
「ゆきあつ」がなぜ女装したのか分からない人がいるようです。確かに作中では詳細な解説などはなかったので説明不足……なのかもしれません。シンプルにあれは一体化したいという気持ちの表れだと思います。

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