スティーブン・キングの「ゴールデンボーイ」を読みました。
本作には、以下の2つの中篇が納められています。
「刑務所のリタ・ヘイワース」
「ゴールデンボーイ」
前半に収録されている「刑務所のリタ・ヘイワース」は映画「ショーシャンクの空に」の原作です。
ジャンルは脱獄ものになりますが、人間ドラマの側面が強いです。
脱獄の場面も真に迫っていて、人間ドラマの部分と見事に融合しています。
読んでいてスカッとする、というわけではなくてモヤモヤし通しですが、それでも読後感はさわやかです。
「刑務所のリタ・ヘイワース」も面白いけど、表題作の「ゴールデンボーイ」のほうが何倍も好きです。
「ゴールデンボーイ」は、頭の良い高校生(けど、ちょっと変人)と、ナチスの戦犯のお爺ちゃんのストーリーです。
ナチスの戦犯は、身分を隠してアメリカ社会で隠遁生活をしているけど、高校生のトッドがそれを見破ります。
無邪気な、未来のある(ように見える)少年と、煙草大好きで枯れかかった老人との対比はユーモラスです。
トッドは当局に通報するかと思いきや、ユダヤ人虐殺についての話を老人にせびります。
それは、少年の人生(もちろん老人の人生も)が狂い出すきっかけでした。
ラストに至る過程が見事というしかありません。
トッドは頭が良く、ドゥサンダーを支配しているつもりだった。
しかしそれは見せかけに過ぎず、ドゥサンダーはトッドの弱みをしっかりと握っている。
ここら辺の駆け引きは読み応えがありました。
かつてを回顧し、犬や猫を殺し、そして浮浪者を殺すドゥサンダー。
トッドもまた、浮浪者を殺してしまう。
精神の安定性を欠いたトッドは成績ががた落ちになります。
ドゥサンダーはトッドの尻を叩いてどうにか軌道修正を計ります。
企みは成功したかに見えました。
しかし、些細なきっかけが重なり、ドゥサンダーの隠遁生活は終わりを告げます。
トッドもまた、引き返せないところまで来ていました。
FBIの捜査の手が伸びます。
結末は鮮烈でした。
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