※少しフィクションありです。
20代の中頃、とある会社の商事関連部署でアルバイトをしていました。
会社から、新規で飲食店を経営するから、そちらに移らないかとの打診がありました。
面白そうなのでそちらで働くことにしました。新規オープンの居酒屋です。
自分はそれまで調理の仕事はしたことがなくて、ほぼ未経験でした。
キッチンにはチーフがいて、和食の料理人でした。
調理師免許とフグ調理師免許を所持していて、和食の料亭で、どれぐらいかは分かりませんが、修行をした料理人です。
江戸っ子……ではないけど、そんな感じの職人気質の人でした。
Aチーフとしておきます。
お給料は、当時の店長とほぼ同額の月額30万円。
店長とは以前から仲が良かったのでこっそりと教えてもらいました。
店長はBさんとしておきます。
Bさんは、業界未経験で料理もできません。
一応、チェーン店なので、B店長は東京の店舗でホールの研修は受けました。
私はAチーフからは料理のことを色々と教わりました。
大変勉強になりました。
半年ぐらい経ってから、別店舗を天神にオープンすることになり、Aチーフは、その天神店に移りました。
自分は、元のお店に残りました(中洲)。
紆余曲折があって、Aチーフが天神店の店長を兼任することになりました。
更に半年後、私が中洲店で働いていると、B店長から電話がかかってきました。
「Aチーフはクビにした」と聞きました。
漫画やドラマなら「お前はクビ!」みたいなことがよくあるけど、リアルでみたのは初めてでした。
Aチーフはお店のお金を横領して、それがバレたのでクビになったのでした。
仕事が終わってから、アルバイトの男女を誘って飲みに行ったり、カラオケやボーリングに行ったりしていたようですが、支払いは全部Aチーフでした。
あとは風俗にハマって、お店のお金をそれに注ぎ込んだとか。
Aチーフは既婚でしたが、仕事をクビになり、奧さんとも離婚したと聞きました。
複雑な心境でした。
師匠と慕った人が、お店の金を使い込んで、クビになって、奧さんに逃げられました。
今はどうしているのか知りません。
あちらも、こちらに会わせる顔はないはずです。
Aチーフの料理人としてのレベルですが、自分は当時未経験だったからよく分からなかったけど、実はそれほど仕事ができたというわけでもないのかもしれません。
オープニングスタッフで、若い板前さんというか、椎名桔平似の料理人がいました。
20代半ばで、当時、自分と同世代でした。
その彼は3ヶ月ぐらいでそのお店を辞めましたが、その彼が言うには「チーフのことはよく分からない。あの人が料理人として、どれぐらいのレベルか、自分には判断がつかない」
恐らく、何度か、んん? と疑問というか、不審に思ったことがあったようです。
自分はその当時、料理については未経験だったから、そういうのが見えてなかったと思います。
椎名桔平似の料理人がそのお店を辞めた理由は「もっと勉強がしたいから」でした。
3ヶ月で、そのお店のことは大体理解できた、ということだと思います。
料理人の中にはそうやって色々なお店を渡り歩く人は珍しくないです。
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